デジタルパーマ、クリープパーマ、コスメパーマ・・・美容室の宣伝には様々なパーマの名称が使われています。髪にボリュームを与えたり、抑えたり、華やかさをプラスしたりと、髪のおしゃれに欠かせないパーマ。でも、種類が多すぎて、美容室に行く時に迷われたことはありませんか?
パーマのネーミングは、機器や薬剤の名前に由来するものから巻き方やスタイルを表したもの、サロン独自の造語までが混在していて、しかも同じ名称でも定義が違うこともあるのが現状です。今回は、パーマの種類と仕組みを分かりやすくご説明します。
関連コラム:ポイントパーマとクリームパーマとは?
毛髪とパーマのメカニズム
最初に、毛髪の構造と一般的なパーマの仕組みを確認しましょう。
毛髪の主成分はケラチンと呼ばれるタンパク質です。ケラチンは多くのアミノ酸が集まって出来ています。アミノ酸同士の結合には以下の4つがあり、髪の特性に影響を与えています。
毛髪の結合の種類
水素結合 水素分子と酸素分子の結合。一番弱い結合で、水に濡れると切断され、乾くと再結合します。寝ぐせの原因にもなります。 イオン結合(塩結合) マイナスイオンとプラスイオンの結合。pHがアルカリ性に傾くと切断され、弱酸性(pH4.5〜5.5)に戻ると再結合します。 シスチン結合 二つのシステイン分子がS-S結合(ジスフィルド結合)を介して結合したもの。S(硫黄)にH(水素)が結合すると切断され、HとO(酸素)が反応してH2O(水)になると、近くにあるS同士が再結合します。 ペプチド結合 アミノ酸の基本的な結合。非常に頑丈で、強酸性や強アルカリ性の状態で切断されることがあります。
パーマは、上記の毛髪の結合の性質を利用して、毛髪の形状を化学的に変化・固定させるものです。
一般的なパーマの方法は「2浴式」と呼ばれ、1剤と2剤、2種類のパーマ液を使用します。1剤を使って、水素結合、イオン結合、シスチン結合を一旦切断し(軟化させ)、髪の形状を変えた後に2剤を使いながら再結合させる、というのが基本的なパーマの仕組みです。
1剤にはアルカリ剤と還元剤が含まれています。アルカリ剤は、イオン結合を切断し、キューティクルを開いて還元剤の浸透を助けます。髪の内部に浸透した還元剤は、シスチン結合を切断します。
2剤には酸化剤が含まれています。酸化剤は、シスチン結合を再結合させます。ワインディング(髪をロッドで巻くこと)した状態でズレたシスチンが再結合するとウェーブが、真っ直ぐな状態で再結合するとストレートになります。
パーマの工程を通じてpHが弱酸性に戻るとイオン結合が、ドライヤーで乾かすとと水素結合が元に戻り、パーマスタイルが完成します。
コールドパーマとホットパーマとは?
一般的なパーマのメカニズムが理解できたところで、次にパーマの種類を説明していきましょう。
まず、パーマの仕組みや工程の違いに注目すると、ほとんどのパーマは大きく「コールドパーマ」と「ホットパーマ」の二つに分けられます。
コールドパーマとは、室温での薬剤反応を利用して形を作るパーマです。一般的にパーマというとコールドパーマを指すことが多く、普通のパーマです。このパーマは、髪が濡れているときにウェーブが強く出て、乾かすととウェーブが緩くなるという特徴があり、少し濡れた状態でムース等をつけて仕上げるのに向いています。ホットパーマに比べて取れやすい反面、髪への負担は限定できます。
ホットパーマとは、薬剤反応に加えて加熱処理を行うことによってスタイルを形状記憶させるパーマです。60℃以上の加熱により髪のタンパク質の形が変化する「熱変性」という性質を利用しています。ドライ後にウェーブが強く出るのが特徴で、ねじって乾かすだけでコテで巻いたような仕上がりになります。縮毛矯正ストレートも同じ仕組みを利用したパーマです。持ちが良い反面、熱変性により髪へ負担が大きくなります。
ホットパーマの代表格である「デジタルパーマ」は、本来はパイモア社の登録商標で、加温ロッドの温度をデジタルで制御することから付けられた名称です。「システムキュール」(資生堂)、「デジカール」(大広製作所)など、加温ロッドを使ったパーマは、メーカーにより色々な名称が使われていますが、原理は一緒です。
なお、加熱をするパーマには「加温式パーマ(ウォームパーマ)」もありますが、これは、1剤塗布後に遠赤外線器などで60℃以下の加温をして薬剤の反応を早めるもので、どちらかというとコールドパーマに近いものです。薬剤を付けた状態で加温するためには、専用の加温式パーマ剤を使う必要があります。
コールドパーマの特徴
- 常温での薬剤反応でかけるパーマ
- 濡れた状態でウェーブが強くが出る
- 濡らしてからムース等でスタイリング
- ホットパーマと比べて取れやすい
- スタイルチェンジしやすい
- 熱くないので根元からかけられる
- 熱変性させないので負担が少ない
- 施術工程が少なく時間がかからない
- 縮毛矯正をかけた後はかけられない
ホットパーマの特徴
- 薬剤に加え60℃以上に加熱するパーマ
- 乾いた状態でウェーブが強く出る
- 乾かしてからオイル等でスタイリング
- 形状記憶で持ちが良い
- 頻繁なスタイルチェンジには向かない
- 短い髪や根元からはかけられない
- 熱変性により髪質が硬くなりやすい
- 施術工程が多く時間がかかる
- 縮毛矯正後にもかけられる
クリープパーマとは?
最近では「コールドパーマ」「ホットパーマ」という従来からの区分の他に、「クリープパーマ」という名称が良く使われています。
クリープ(Creep)とは、元々「物体が圧力によって徐々に変形すること」という力学上の用語です。クリープ変形には、時間が経つほど変化が大きく、温度が高いほど変化速度は速くなるという特徴があります。
パーマの工程では、1剤をすすいだ後にロッド等を巻いた状態で放置する期間を「クリープ期(Creep Period)」と呼んでいます。クリープ期に時間を置くと、弱めの薬剤を使った場合や1剤を洗い流した後でも、還元剤で切断されてできたSH自身が還元剤として機能し、残っているS-S結合を次々に繋ぎ代えて不必要な歪みを解消することができます。また、毛髪内のコルテックス細胞自体もロッド等に沿ってストレスのない位置まで移動させることができます。
クリープパーマとは、このクリープ期を意識的に利用したパーマです。クリープ工程は、実は1950年代の昔から利用されていたものですが、専用機器や薬剤の開発などを背景に、近年「クリープパーマ」という名称で再び脚光をあびるようになりました。最近は、特に、60℃以下の低温で蒸してクリープ変形を促進させるものをクリープパーマとして定義していることも多いようです。仕上がりの特徴は、コールドパーマとホットパーマの中間に位置しています。
クリープパーマには、使用する機器や薬剤等によって様々な名称がつけられており、「低温デジタルパーマ」や「エアウェーブ」(タカラベルモントの登録商標)なども、クリープ期に注目した低温加熱パーマの一種です。エアウェーブでは、低温加湿に乾燥(ガラス化)工程を加えることで、よりホットパーマに近い仕上がりになります。
クリープ理論は、コールドパーマ、ホットパーマの両方と組み合わせることができ、あえて「クリープパーマ」と表示されていなくてもクリープ期を利用していることも多々あります。
医薬部外品のパーマ剤と化粧品のカーリング料とは?
次に薬剤の種類からパーマを区分してみましょう。
パーマ液は、薬事法の分類上、医薬部外品として登録されている「パーマ剤」と化粧品として登録されている「カーリング料」の二種類に分けられます。
医薬部外品のパーマ剤は、1剤に含まれる還元剤の成分から、強めにかかるチオ系(チオグリコール酸を配合)とゆるめにかかるシス系(システインを配合)に分類されています。また、この二種類を組み合わせたものもあります。
化粧品のカーリング料(洗い流すヘアセット料)は、システアミンやサルファイト(亜硫酸ナトリウム)、チオグリセリンなどが還元剤の主な成分です。さらに一定量未満のチオグリコール酸やシステインを配合したものもあります。
カーリング料を使ったパーマは、コスメ系パーマやコスメパーマとも呼ばれ、化粧品の規制緩和を背景に多く利用されるようになりました。最近では、低刺激なもの、柔らかい質感に仕上がるもの、弱めでトリートメント効果のあるものなど、様々なコスメパーマが出回っています。以前はかかりが弱いと言われていたカーリング料ですが、ある程度強くかかるものも増えてきています。
医薬部外品と化粧品の分類は、あくまでも法律上の分類であり、基本原理は一緒です。「化粧品だから傷まない」という意味ではなく、希望のスタイルや髪質、髪の状態に応じて、適宜使い分ける必要があります。なお、少なくとも一方が化粧品登録であれば、薬事法上はパーマとカラーを同時に施術することが可能です。
パーマの種類のまとめ
ここまで「仕組み・工程の違い」「薬剤の違い」から、主要なパーマの種類をご説明しましたが、他にも「巻く道具の違い」「巻き方の違い」「スタイルの違い」などによって様々なパーマの名称がつけられています。最後に主要なカテゴリーごとにパーマの種類と内容をまとめてみます。
仕組み・工程の違い
コールドパーマ(コールド系パーマ) 常温での薬剤反応を利用して形を作る普通のパーマ。 ホットパーマ(ホット系パーマ) 薬剤の作用に加えて、60℃以上の加熱処理により、熱変性を利用してスタイルを形状記憶させるパーマ。 加温式パーマ(ウォームパーマ) 1剤塗布後に60℃以下の加温をして薬剤の反応を早く(強く)するパーマ。コールドパーマに準じるもの。 クリープパーマ クリープ期を意識的に利用したパーマ。コールドパーマ、ホットパーマ両方に組み合わせ可。 スチームパーマ(水パーマ) ナノ化されたスチームを使ったパーマ。水蒸気にはキューティクルを開く作用があり、水分補給と合わせて、薬剤の髪への浸透を早めることができる。各種パーマにオプション的に利用。
薬剤の違い
パーマ(一般的なパーマ) 従来から使われている医薬部外品のパーマ剤を使ったパーマ。 コスメパーマ(コスメ系パーマ) 化粧品登録のカーリング料を使用したパーマ。
巻く道具の違い
デジタルパーマ(システムキュール、デジカール、形状記憶パーマなど) 加熱できる専用ロッドで巻くホットパーマ。大きなワンカールやボリューム感のある巻き髪が得意。熱が均一に伝わりにくい細かいウェーブは苦手。 コテパーマ(アイロンパーマ) ロッドの代わりに、熱したコテを使うホットパーマ。内巻き・外ハネ・ストレート等が自由にミックスできる。 フィルムパーマ 指でカールを作り、フィルムパックしてアイロンでプレスするホットパーマ。立体的なカールには向かない。 低温デジタルパーマ 60℃以下の加温ロッドを使ったパーマ。クリープパーマの一種。 エアウェーブ(エアパーマ) 60℃以下の低温加熱に乾燥(ガラス化)工程を加えたパーマ。クリープパーマの一種。
巻き方の違い
横巻きパーマ(平巻きパーマ) 床に対して毛束を平行に取り、ロッドが横に収まるように巻くパーマ。髪全体を平巻きにするオールパーパス(All Purpose)も平巻きの一種。ウェーブの重なりでボリュームが出やすい。 縦巻きパーマ 床に対して毛束を垂直に取り、ロッドが縦に収まるように巻くパーマ。顔の中心にむかって内側に巻くのがフォワード(Forward)巻き、外側に巻くのがリバース(Reverse)巻き。 スパイラルパーマ 髪の根元から毛先に向けて、ロッドに毛束を縦巻きにらせん状に巻きつけるパーマ。毛先と根元が重ならないように巻くので、均等な大きさのカールがつく。縦巻きパーマの一種。 ツイストパーマ 髪をねじりながらロッドに巻いたり、ピンで留めてかけるパーマ。ドライな質感と毛束感が特徴。ねじり具合によってボリュームの強弱をつけたり、多様なウェーブをつくることができる。 スティックパーマ(針金パーマ) 針金など、細い棒をロッドとして使ったパーマ。細くスパイラル状のウェーブを出すことができ、ハードなイメージに仕上がる。 ピンパーマ 指でカールを作った毛束をコットンやペーパーで包み、ピンで留めてかけるパーマ。ショートヘアの他、部分的なボリューム調整や毛先のランダムな動きを出すのに便利。 ワッフルパーマ(三つ編みパーマ) 細かい毛束を三つ編みや四つ編みに結んで、またはワッフルアイロンを使って、細かい波状のクセをつけるパーマ。ボリュームが出て、バサッとした仕上がりになるのが特徴。
スタイルの違い
ボディパーマ(ニュアンスパーマ) 太いロッドでゆるくかけたパーマ。くせ毛風の自然で柔らかい質感が特徴。根元や毛先の方向づけや、ボリュームアップにも使われる。ボディ(Body)は、英語で髪の毛のボリュームのこと。 ミックスパーマ(コンビネーションパーマ) ロッドの大きさや巻き方を変えたり、ストレート部分を残したりと、複数のパーマを組み合わせて作るパーマ。質感をミックスすることで、表情のあるスタイルを作ることができる。 ストレートパーマ 髪のクセや広がりをまっすぐに伸ばし、ボリュームをダウンさせるパーマ。一般的に「パーマを取る」「落とす」はストレートパーマをかけることを指す。 縮毛矯正ストレートパーマ ストレートパーマの一種。主流はストレートアイロンを使用するホットパーマ。ガンコなクセ毛やウェーブヘアをストレートにする時に使われる。
パーマをする時の注意点
様々なパーマの種類をご紹介しましたが、サロンやスタイリストによって同じ原理のパーマでも名称が違ったり、反対に同じ名称でも内容が違うことも多く、さらに、次々と新しいパーマ(の名称)が作られているのが現状です。また、それぞれのパーマには、一般的な特徴やメリット・デメリットがありますが、どのパーマがベストかは、求めるスタイルだけでなく髪質や髪の状態によっても変わってきます。
美容院でパーマをオーダーする際には、実はあまりパーマの種類にこだわる必要はなく、なりたいスタイルや好きなスタイリング方法を伝えて、それに合った薬剤や工程、巻き方をプロの美容師に選んでもらうのが良いと思います。カウンセリングで出来上がりのイメージをよく話し合うことが重要です。
KANOW GROUPでは、バリエーション豊富なパーマでご希望のスタイルを実現します。薬剤や施術方法を工夫してダメージを押さえるのはもちろん、必要に応じてトリートメントやご自宅でのケアについてもご提案させていただきます。ぜひお気軽にご相談ください。